安静時の顎口腔系の姿勢の多様性と,口唇閉鎖時の下顎安静位に関するアンケート調査

投稿日:2017年6月4日

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安静時の顎口腔系の姿勢の多様性と,口唇閉鎖時の下顎安静位に関するアンケート調査

Investigation of Questionaire for Variation of Stomatognathic Posture at Rest and for the Possibility of Mandibular Rest Position in Closing Lips

〇武石篤典,野谷健治,川崎貴生

Ⅰ.目的
 日中のクレンチングの改善法として, Teeth
Apart 法により安静な下顎位(口唇閉鎖安静位)
を認識させる行動療法を行うことがある1). しかし患者によって,口唇閉鎖したまま下顎安静位を保持することが困難な場合がある.そのような患者では,口唇閉鎖すると歯牙が接触しやすいため,無意識にクレンチングしやすい状態にあり,前述の行動療法を行っても効果が得られにくいことが予想される.  
 そこで,患者に応じた治療を検索するうえで,口唇および舌の状態を含めた顎口腔系の安静時の状態,その状態をとっている原因を把握することが必要と考え,アンケート調査を行った.  
Ⅱ.方法
 アンケートは,平成11年2,3月に本学附属病院咬合系歯科A診療室の補綴コーナーを受診した患者の中で,研究の主旨を説明し協力が得られた
538名 (女性394名,男性144名,平均56.5歳)を対象として行い,集計,分析した.
 1.患者に対するアンケート調査
 質問は25項目あり,主な項目を以下に示した.
 1)顎口腔系を,最も自然であると感じる状態,もしくは最もリラックスさせた状態にしたとき,口唇閉鎖や歯牙接触の有無,その時の舌の位置や状態,鼻呼吸などについて.
 2)一旦口唇を離開し弛緩させ,筋緊張を感じない状態で閉口した時,口唇と歯牙のどちらが先に接触するか.  
 3)口唇閉鎖安静位をとることができるか否か.それを楽に保持することができるか.
 2.担当医による診査
 各人の口腔の状態と診療内容について,担当医が専用の調査票に記録した.差の比較はχ2検定により評価した.  
Ⅲ.結果と考察
 1.安静時の顎口腔系の姿勢について
 1)安静時の状態は,口唇閉鎖の有無と歯牙の接触の有無によって4群に分類できる.安静時に必ずしも口唇が閉鎖するとは限らず,歯牙接触を有する患者は少なくなかった(図).2)加齢とともに,歯牙接触している割合が大きくなる傾向がみられた.3)安静時に歯牙接触のある群では,歯牙接触のない群に比較して,閉口時に口唇が先に接触することが少なかった(p<0.01).
 2.口唇閉鎖安静位について
 1)口唇閉鎖安静位を楽に保持できない群が,
58.5%であった.2)口唇閉鎖安静位を楽に保持できない群では,保持できる群に比較し,閉口時に歯牙が先に接触する状態が多く(p<0.01),安静時には歯牙が接触している状態が多く認められた(p<0.01).
 今回,安静時に歯牙接触している患者,および口唇閉鎖安静位の保持が困難である患者が少なからず認められた.また口唇閉鎖安静位の保持には,口唇が弛緩した状態で閉口した時,口唇と歯牙のどちらが先に接触するかが関係しており、解剖学的な要素が関わっていることが考えられた。